6098写真

[ 回 路 図 ] [ ハラワタ ]



2台目の全段差動PPアンプです。前作の6CA7で、音的には何の文句も無いのですが、ただ夏場の発熱をもう少しなんとかしたいと思い企画しました。当初の計画では、出力も4〜5ワットにおさえて余裕のあるトランス類を使用し、終段管も軽い動作で・・・と思っていたのですが、6098を衝動買してしまい試作を繰り返すうちに段々欲が出て、当初の目論見はあえなくふっとんでしまいました。MT菅が2本減ったのと、終段管のヒーター消費電力が20%少なくなったので少しは省エネになったかも・・・?。

〔終段菅〕」

アンプ作りも6台目ともなると、ちょっと変わった球を使ってみたくなるのが人情というものでしょうか。あれこれ検討中にオークションでみつけた6098という球の小ぶりで頑丈そうな容姿が気に入りました。初めて聞く品番でしたが6AR6の同属菅ということです。1番違いの6AR5なら大昔に何度もお世話になったことがありますので、それに近い性能のものなら今ひとつかな?と思いつつネットで諸々調べたところ、WE設計の大型クラスのビーム電力増幅菅であることが判明。3結の曲線もきれいに並んでいるし、4KΩのロードラインを引いてみたところ、300V・45mA位で差動PPにうってつけの条件のようです。この時のP損失13.5Wは最大P損失(21W)の64%位と余裕十分で7ワット位の出力が取れそうです。だた、6CA7等に比べると増幅率が低いのと、バイアスが少し深めになりそうなので、2段構成ではドライブに苦労する(多分無理だろう、ダメなら3段構成で)と思いつつ、ナントかなるだろうと、その日の内にゲットしてしまいました。茶色ベースのTUNG−SOL社製で、ズングリとしているのに精悍そうな趣のある球です。

〔初 段〕

全体の回路を決めずに終段菅を決定してしまいましたので苦労しました。前作の試作で使った実験シャーシがそのまま(初段は6AN8、5極−3極SRPP−6CA7の2段構成)残っていたので、とりあえづ終段のソケット配線を6098に変更してオシロで観測してみると、やはりドライブ不足です。負帰還をかける余裕が全くありません。終段でのゲインが6CA7で約8倍あったのが、6098では約3.5倍しかないことも判りました。

また、前作と全く同じ回路にもしたくなかった(6AN8の選別に苦労した)ので、普通の3段構成にしようかとも考えたのですが、それでは見てくれが前作と似たり寄ったりになりそうで面白くありません。となると、選択肢は二つです、半導体−ドライブ菅−終段菅の3段にするか、ぺるけさんのHP.にある<SRPPレポートその2>のアイデアをそのままいただいて、半導体+双3極菅のSRPP−終段の2段構成でトライしてみるかです。

そこで、前者は最後の手段とし、後者の実験から始めました。最初は2SK30+6DJ8(FETの耐圧用に2SC2752をカスケード接続)で実験を開始しました。机上で設計が出来るベテランの方なら、こんな面倒な事をしなくても結果が分かってしまうのでしょうけど..、初心者ゆえの辛いところです。 2SK30での結果は一応大成功のようです。7.8dbの負帰還を掛けて総合利得9.4倍、出力は7W強という満足のいく数字です、歪率も前作同等のそこそこの数字です。高域の特性はこちらの方が良く伸びているようです。

さあ、これで、あとは平行して買い集めていたトランス類と部品でシャーシに組み上げるだけになったのですが、ふと気になる事が出てきました。6DJ8のプレート電流を1mAしか流してないのです。特性曲線からみて、どうも少なすぎるようです。実験途中、BBSでアドバイスをいただいた数字から、SRPPの共通ソースを2mAのCRDでマイナス電源に繋いでいたのですが、2SK30のIDSSが4mAの選別品でしたので、片側を2mA位にとアドバイス頂いたのを誤解していたようです。CRDを4mAのものに交換しみると、ゲインが半分位に落ちてしまいました。

歪率等はそこそこ満足のいく数字が出ているので、このまま片側1mAで組み上げようかと迷ったのですが、なにか気色が悪い(なんの根拠も無いのですが)ので、どうにかならないものかと思案しました。そこで目に留まったのが、これも掲示板でベテランの方に教えていただき、2SK30と平行して一度実験した2SK389というFETのデータシートです。この石での一度目の実験の時に、びっくりする様なハイゲインをもてあましそうなのと、その形態(7本足のデュアルFET)から実装の難しさ(年寄りの目にはきつい)を感じて没にしていたものですが、再び登場してもらうことにしました。

この石の有り余るゲインの調整が課題だったのですが、掲示板で頂いたアドバイスのなかに「ソースに抵抗を入れれば・・・」との言葉を思い出し、この石を使っている回路をネットで検索しまくってみました。その結果50オーム〜120オームと見当をつけ、交換可能なようにスペースに余裕をもたせた試作基板でまづ100オームで試してみました。 15ワットのコテと、台座付きの天眼鏡 0.6ミリの半田で、ゆっくりと慌てず作業を進め、出来上がった基板を試作シャーシの2SK30の基板と交換完了です。早速電源を入れ測定してみたところ、いい具合のようです。無帰還でのゲインが33倍位で、これならちょっとだけ多めに負帰還を架ければ総合で10倍位のゲインに仕上がりそうです。念の為にざっと各周波数の矩形波の観測と、歪率をみてみましたが概ね満足な答えが出ました。

〔シャーシー〕

今回も鈴蘭堂のSL−8HGを使用しました。丁度いいサイズです。3月初めにはレイアウトを決めて、図面も出来上がっていましたが、初段の回路も決まらないし、年度末で時間が思うように取れづ、ゴールデンウィーク中には何とか完成させたいと思い、4月の初旬にトランス類とシャーシを買っておこうと日本橋の東京真空管商会に出かけたのですが、鈴蘭堂の都合でシャーシの販売を中止しているそうです。ネットで調べたらHG型と新製品の一部だけは通販で入手可能だということが判り即、注文を出して、3日後に入手出来ました。いつも、同じようなレイアウトに成ってしまうので、少しは違ったデザインにしようと思い終段管の並びをチョコットだけいじってみました。自分ではなかなか気に入ってます・・・。

{音の印象}

自作の瞬時切替器で、前作の6CA7機と聴き比べてみました。ほとんど聞き分けられない状態です(私の耳のせいかも?)。しいて言えば、このアンプの方がほんの少しだけ重心が高い方に寄ったように聞こえます・・・?。高域の特性がこちらの方が伸びているからか自分でスイッチ操作をするので先入観が入るせいでしょうか?。RUND関数を使ってパソコンで自動的にA/Bと時間がランダムに切り替わるようにすれば面白いかもしれませんね。

★★ 測 定 結 果 ★★

    L-ch     R-ch
 裸利得(1KHz/1W)   32.8倍(30.3db)   32.1倍(30.1db) 
 負帰還後利得(〃)   10.9倍(20.8db)   10.8倍(20.7db) 
 負帰還量      2.98倍(9.5db)   2.96倍(9.43db)
 最大出力(8Ω)   7.6(W)   7.9(W) 
 入力感度(7W時)   0.73(V)   0.74(V) 
 歪率(1KHz 1W)   0.125(%)   0.119(%) 
 歪率(1KHz 7W)   1.49(%)   1.63(%) 
 最小歪率(1KHz)   0.089(%)/0.2(w)   0.073(%)0.3(w) 
 残留雑音レベル   0.15(mV)   0.08(mV) 
 D/F(1KHz 1W)   7.13   7.13 


6098歪率


6098F特




★ 歪率は,パソコンに外付のサウンドボード(SoundBlaster Audigy2NX)とフリーソフトの[WeaveSpectra]を使用しての計測です。精度は???です。
  (この測定で、出力管は左右同じペアを使用)
★ 周波数特性は左右とも低域は20Hzまでフラット、高域は40KHzまでほぼフラット、その後だらだら落ちて140KHzで−3dbとなりました(16Hz〜216KHzが測定限度)。
☆ 後に、SP端子を当初のネジ留め式からババナプラグ対応型に交換しました。内部写真は交換後のものです。



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